第4話
”おもしろきこともなき世をおもしろく”と検索窓に打ち込んで、一つスペースを開けて”めろりんめろん”と入れて検索を実行してみると、そのブログは確かに実在していた。驚きはなかった。あって当然だと思った。
さりとて、夢の中で何度も見たそのトップページから、嘘くさい自分語りの個別記事のリンクをクリックしようとは思えなかった。なぜ起きている時間をもめろりんに支配されなきゃならない? 毎日見る鮮明な夢だけでもうんざりなのに、起きている今もめろりんの書いたバカな文章を読みに行く? そこまでバカなのか、僕は。
ただし、夢で読んだ内容と、起きている僕の目の前のPC画面に表示されるめろりんの記事の内容が一致しているかどうか、それを確かめるのは必要だ。管理画面に表示されていた閲覧者ゼロの証拠であるハイフンがカウント1になるのは癪に障るけど、自分語り以前の罵詈雑言記事の内容なんてもう覚えていないから、夢が本当だったと証明するにはあの嘘くさい記事を読むしかない。それも、記憶がまだ消えていない今のうちに。
なんだか悶々としてきた。こういう時はいつものルーティーンをこなすのがいい。僕はテレビの電源を付けてソニックザヘッジホッグが刺さったままのメガドライブを起動した。めろりんはスーファミ派らしいが、僕はメガドラ派だ。そういえばボチボチ腹が減ったな。僕は辛うじて僕一人だけが座れるゴミだらけの部屋で、三角座りの姿勢から片足を上げて勢いよくドンと床を打ち鳴らす。お前らが勝手に僕を生んだんだ。生んだ責任をちゃんと果たせよ。しっかり僕を養え。早く飯を持ってこい。
さて、めろりんのブログはどうしよう。テレビモニターの中ではソニックがいつも通りに一つのミスも狂いもなく軽快に走っている。夢で見た内容そのままだったなら、僕はあの記事にコメントを残すべきだろうか。ソニックがリングを取るたびに鳴るサウンドエフェクトが心地いい。『キモオタデブニート嘘乙』とか書いたらめろりんはどんな顔で怒るだろう? 残念ながらPCのモニターがブラックアウトした時くらいしか僕がめろりんの顔を見る事はないのだけれど。
あぁ、べつに全然残念じゃないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます