また君に
その後は授業の内容が全く頭の中に入らなかった。早く夜が来てほしいとばかり思っていた。学校にいるのは辛い。家にいてもお母さんからのプレッシャーで心が痛い。だけど、何かを楽しみにするということは、私の心の支えだった。
昨日と同じ時刻。私は展望台に向かう。今日は昨日より一段と冷え込んでいて、昨日より厚着だ。ポケットの中にはカイロを忍ばせている。あの夏の日からだんだん離れられているような気がして、なんだか複雑な気持ちになった。
「よう」
すでに展望台にいた彼が、展望台の柵につかまり、街の景色を見下ろしながら、私に手を振る。私もその姿を見つけ、柵の方へと歩く。彼と並び街の景色を見ていると
「昨日はゴメンな、」
と彼が口を開いた。なんのことだろう?と頭に疑問が浮かぶ。そんな私の様子を見て彼は
「おまえのことをおいて先に帰ったことだよ。」
と口を開く。
「あぁ、全然気にしてないよ。てか、なんで謝るの?」
「いや、なんかあの状態で一人はやっぱ危なかったよな、と思って」
「ふぅん」
彼は相当律儀な人らしい。普通、その日に出会った人をそこまで気にかけたりしないだろう。もしかして、今日私を誘った理由もこの謝罪が理由だったりするのだろうか。彼がそういえば、と口を開いた。
「俺の名前教えてなかったよね?」
知ってるよ、という言葉を飲み込んで彼の言葉を待つ。
「俺の名前は星夜。よろしく。星夜ーとか星とか気軽に呼んで。」
「うん、よろしく。私の名前は美鈴。私の名前も好きなように呼んでいいから。こちらこそ、よろしくね。」
彼が手を差し出したので、握手を求めてると察して私はその手を握り返す。
「あっ、LINE繋ごうよ。これからもこーいうことあるかもしれないし!もっと仲良くなりたいしさ〜」
彼はそういうことを誰にでも言うのだろうか?少しドキッとしてしまう。そして、彼とはLINEをつないだ。私の数少ないLINEの友達に、彼の『sei☆』という名前が加わった。彼のアイコンは海に反射する月と、たくさんの星が見える夜空の写真だった。
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