眠れない夜に
お母さんに言われたことをすませ、勉強を始める。お母さんには、家で1日に7時間勉強をすることを約束させられている。いつものように勉強を始めると同時にスマホのタイマーを起動させようとしたとき、開きっぱなしだったLINEのページに見たくもない名前がのっていることに気づいた。そしてそれを見た瞬間、一気に学校のことを思い出す。体が冷たくなったような感覚を覚え、震えだす。それをなんとかこらえ、勉強を終わらす。おわったのは1時半のことだった。
布団にくるまり、目を閉じる。しかし、眠ることはできなかった。思い出したくもないことが、頭の中で勝手に再生される。
_「田辺さんのせいで…」
―「田辺さんがいなければきっと助かったのに…」
もう、限界…
「はぁ!!!」
眠れない。眠れるわけない。私はベッドからおり、壁にかけてあった上着を手に取ると、そのまま家の近くにある公園の展望台までいった。
公園は私の地域では一番大きいところだった。敷地内には大きなテニスコートの電球が光り、遊具もこったものがたくさんある。時間もあって、公園には誰一人人はいなかった。それが心地よかった。展望台につくと、冷たい冬の風に吹かれた。街を一気にを見わたす。何とも言えない幸せな時間だった。しばらくすると、展望台にあったベンチに座った。そして、冬の空を見上げる。そんな時間に浸っていると後ろからガサッと音がした。ずっと人がいなかったのでビックリして振り返ると、同い年くらいの男の子がそこに立っていた。
「えっ…?」
男の子は人がいた事にびっくりしたのだろうか。でも、ビックリしたのは私の方だ。しばらく固まっていた。が、
「人がいると思わなかったから、ビックリして…」
と男の子がおもむろに話しだした。
「わっ、私もこの時間に人がいるのは初めてです」
私が話したから、いいと思ったのだろうか。男の子は私の隣に座った。
「!?」
「あー、そうなんだ。いつもいるの?」
男の子はそんなの気にしていないみたいだ。だから私も気にするのをやめた。
「いつも…ではないですけど、だいたい毎日いますよ」
「そっか。ここ、いいよね。世界は広いんだ、って教えてくれてるみたいで」
「そんなふうに…私はそんなふうには感じていませんでした。」
「じゃあ、どんなふうに感じていたの?」
難しい質問だ。だって私はそんな事考えたこともない。でも、考えてみると
「風に吹かれていると、生きているって感じることができるから、かなぁ?」
やっと絞り出した答えをいうと、
「…そっか」
と返された。そのあとはしばらく沈黙が続いた。けれど、その沈黙さえも心地よかった。少しうとうとしてきて、目を閉じる。目が覚めたのは朝で、そこには男の子はいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます