ひとりでけんこくしたおうさま

それはある日突然起きた出来事だった。

何もないまっさらな土地に、突如としてひとつのお城が建ったのだ。

そして驚くべきことに、そのお城はひとりの力と知恵で作られた。

周りには様々な生き物が集い、お城の周りに住み始めた。

そのお城は周りでは存在しないほどの高さを誇り、さらに頑丈さを備えたまさに要塞とも見える素晴らしい建物であった。

あぁ、お城をひとりで建てた人は誰かって?

もちろん、この国の王様だ。

王様について知れば、なぜ王なのかと疑うだろう。

その王様は、非力であった。腕っぷしが強いわけでも無いただの人だ。

その王様は、無知であった。頭が切れるわけでもなくただの人だ。

けれど、その王様は“愛されていた”のだ。

みなから愛され、可愛がられ、物を貢がれることもしばしばあった。

そんな王様がひとりで建国したことによって、周りの人々は王様を褒め称えた。

「流石王様!すごいですね!」

「王様かっこいい!僕もお城に入れてほしいなー」

人々はその豪華なお城に憧れて中に入ることを願ったが王様がそれを許すことは無かった。

たったひとりで建国した王様は、ちやほやされていた。

王様は言葉にならない笑顔を周りに振りまき、それによって人々も笑顔になった。

しかし数刻が過ぎたある晩、その時はついに訪れた。

お城が敵に攻められたのだ。

それも、王様のことを慕っていた中のひとりによって...

数分の間、王様は自分のお城が崩されていくのをただ眺めているしかなかった。

抵抗するすべは無く、捕虜のように扱われ、牢の中に閉じ込められた。

いくら叫んでも破壊の手は止まることを知らず、気が付けば立派なお城の建っていた場所はお城の跡形もな無くなり、ただの広大な土地だけを残した。

今までそこにいた他の民もたった一人の手によって片付けられてしまった。

王様は涙した。

成果を、努力を踏みにじられた思いから、大粒の涙を流した。

悔しがっていると、突然体を掴まれ、牢から出された。

そして椅子に座らせられ、目の前には豪華な食事が並んでいた。

そう、これは...

“最後の晩餐”である!

王様は覚悟を決めた!

たとえここで果てたとしても、私の意思は民が引き継ぐと!

王様は自ら手にスプーンを持った。

そして忌まわしい緑色の悪魔の入った晩餐に手を伸ばした!

それを掬い、王様は口に運んだ!

苦しい、苦しい、気を失いそうだ。

けれど王様たるもの、こんなところでは果てれぬ!

目をギュッとつぶり咀嚼をする!

その姿を見ていた二人(内一人はお城を壊した男)は喜んだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

「わぁ!ピーマン食べれて偉いねぇ!」

「おっ!ついに俺の息子も大人になったか...」

そう、これはある家族の「一人の小さな王様」の面白いお話なのである。

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