第13話 エピローグ

冬が終わり、春が訪れた。


 駅前のベンチには、もう雪はない。


 藤崎圭吾は、変わらぬ景色を眺めながら、ゆっくりと深呼吸をした。


 あの日、確かに雪はそこにいた。


 それは幻だったのか、記憶が作り出した幻想だったのか。


 答えは分からない。


 しかし、彼の手のひらには、まだあの微かな温もりが残っている気がした。


 「……ありがとう」


 静かに呟く。


 雪の降る日々は終わった。


 だが、あの再会は、彼にとっての奇跡だった。


 そして、それを胸に生きていこうと、そう思った。


 圭吾はベンチから立ち上がり、新しい季節へと歩き出した。

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『幻影の記憶』— 12の幻想譚 — Algo Lighter アルゴライター @Algo_Lighter

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