寄り道は楽しい?
俺はあの日から北条さんと一緒に帰っていた。最初の頃は黙り込んでいることが多かったけど、今では喋ることも増えてきた。
「…体育の授業でペアになってくれてありがとね」
「俺も組む相手がいなかったからね」
「ふーん」
信号が赤だったので、俺たちは立ち止った。
「…そうだ、田中君って本読む?」
「漫画とかはよく読むけど」
「じゃあちょっと付き合ってくれない?」
俺たちは近所の少し大きな本屋さんに入ることにした。
本屋さんに来ること自体は久しぶりなのだが、まさかクラスメイトとくることになるとは思わなかった。
「わがままに付き合わせちゃってごめん」
「いいよ、欲しいものがあったからちょうどよかったよ」
欲しいものがあるのは嘘だ。けれども、申し訳ない気持ちにさせるのも違うと思った俺は、嘘をつくことしかできなかった。
すると北條さんは、ライトノベル本が陳列されている場所に向かった。俺もライトノベルを北條さんと一緒に見ると
「…どれを買おう」
と悩んでいた。ライトノベル作品を見ていると、確かに面白そうな
作品が多くて、買いたくなるものが多かった。
「いや買うものは決まっているんだけど、値段が高くて買おうか悩んじゃうんだ」
「…一冊で千円もするの!?」
値段を見て驚いてしまった。
確かに買おうかどうかためらってしまう。
「どんな本が欲しいの?」
「ラブコメ本なんだけどさ、こういう…」
と本をもって説明してくれる。タイトルには『ラブコメに現実を持ってくるのは間違っている』という本だった。
「…いいな、俺も買おうかな」
と俺はその本をあるだけ手に取る。
かなり重くて正直つらい。
「…あとで北條さんに貸すから」
「あ、ありがとう」
と本を持ちながら会計に向かう。かなりの本だったので、お金が無くなりそうだった。
俺たちは本屋を出た後、お腹のすく音が聞こえた。
「…どこかで食べる?」
「あそこのハンバーガーのお店で」
恐らくマックのことだろう。
俺たちはピエロのたたずむ店の中に入った。
俺はチーズバーガー、北條さんはチキンチーズバーガーを頼んだ。
「…美味しい」
「確かに、チーズが相まっておいしいね」
と互いのハンバーガーの感想を言い合っている。
「そうだ、田中君のハンバーガーちょっと頂戴?」
「わ、分かったけど…」
と俺はチーズバーガーを北條さんの口元に運ぶ。北條さんの口元は、少し小さくて可愛げのある口だった。
そして、その口にチーズバーガーが運ばれて…
「美味しいね。そうだ、一口くれたから、私のハンバーガーも一口いいよ?」
「え?いいの?」
確認するけど北條さんは特に何も言ってこない。この時の北條さんの顔はちょっと楽しそうな顔だった。
(…今気づいたけど、これって間接キスじゃん!?)
ちょっと恥ずかしくなってしまったのだが、俺は覚悟を決めて北條さんのチキンチーズバーガーに一口かぶりついた。
「美味しい?」
「…美味しいです」
嘘です。味なんか覚えていません。
そのあと俺たちはマックで解散して帰宅した。
ヤンキーと恐れられている女子が、実はむっちゃ可愛いということを俺だけが知っている。 そーた @kame_iruka
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