お弁当とご一緒に
昨日は北條さんと一緒に帰った。仲良くなりたい俺としてはかなりの進歩だと思う。でもまだ疑問が残っていることがあるんだ。
それは、あの日から北條さんのことを見ていると必ずと言っていいほど昼休みや休み時間になると教室を出てどこかへ行くことだ。
「…何見てんの?」
「あ、いや…」
思わずじっと見つめてしまい、北條さんに気付かれてしまった。
「いや、見るのは別にいいんだけどさ、こうも見つめられると恥ずかしいんだけど…」
と顔を赤くしながら喋る。
その姿は、とてもヤンキーと恐れられているとは言えないほど、かわいらしかった。
「ご、ごめん。そういえば休み時間になるとどこか行くよね。いったいどこへ行ってるの?」
「…一人が好きだからトイレに行ってる」
トイレ…?
俺はなんとなく、触れない方がいいと思った。
「ふーん、じゃあ今日お昼一緒に食べよ?」
「ど、どうしてそうなるのよ」
「…一緒に過ごしたいから?」
お昼休みに俺は、北條さんと一緒にお弁当を食べる約束をした。
お昼休みの時間になると、食堂に向かう生徒たちと、教室に残って弁当を広げる生徒たちがいる。
当然俺は弁当なので教室に残って弁当を広げる。だが今日は北條さんと弁当を食べるために机をくっつけて座る。
「…田中君のお弁当、美味しそう」
「お母さんが頑張って作ってくれたからね」
と何気ない会話をする。
周りを見渡すとかなりざわついている。
「北條さんのお弁当もおいしそうだね」
「…頑張って作ったから」
「自分で作ったの?」
北條さんが作ったお弁当らしい。具材がかなり乗っていて、その中でもかなり目立つのが唐揚げだった。
とても美味しそうな色をしていて、自分のお弁当だったら絶対に一番最初にかぶりついていると思う。
「…唐揚げが気になるの?」
「え、いやぁ…美味しそうだなって思って」
「一個いる?」
唐揚げを見つめていたらまさか唐揚げをシェアしてもらえることになった。
「え、でもそれだと唐揚げが…」
「私はいいの、味の感想教えてね」
すると俺の弁当箱に唐揚げが乗った。でもさすがにもらって終わりだとだめだと思ったので、俺の弁当箱にあるミートボールを北條さんのお弁当箱に乗せた。
「唐揚げくれたからあげる。味の感想を教えてね」
「う、うん」
と北條さんは俺のお弁当箱にあったミートボールを口に運ぶ。
しっかりと噛んで食べているのが俺から見てもよく分かる。
「…美味しい」
とミートボールを食べ終わったところで俺も北條さんの作った唐揚げを口に運ぶ。肉汁が口の中に広がるのがよく分かるし、多分二度揚げしたのか、かなりジューシーだった。
「…唐揚げ美味しいね」
「良かった」
俺たちはお弁当の具材をシェアした後は普通に弁当を食べて完食したのだった。
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