仲良くなりたい
結局昼休みをスマホを渡す時間に使ってしまった俺は、十分にご飯を食べることができずに午後の授業を迎えることになってしまった。
先生の言っていることは分かるのだが、さっきからお腹がぐぅっと鳴って集中できねぇ…
何とか空腹に耐えて帰宅の時間になった。
他の生徒は「部活だ部活ー」だったり「ようやく終わったー」といった声が聞こえるのがよく分かる。
琉人はこれからサッカー部の練習があるのでと一目散にグラウンドに走っていった。
そして俺はふと、こんなことを考えた。
北條さんと仲良くなりたい!
そう思ったのはいいけれど、肝心のその方法がよく分からない。
「田中君?だったっけ」
「あ、北條さんだ」
そんなことを思っていると北條さんが俺のもとにいた。
「あのさ、今日一緒に帰らない?予定とかはある?」
「特に…ないけど」
こうして俺は、北條さんと一緒に帰ることになった。
少し人が少なくなり始めていて、それでいて夕日が俺の肌にあたっているのを感じる帰り道、そんな中俺は、人生の中でかなりの気まずさを感じていた。
北條さんとの帰り道、ここまで何もしゃべらずに帰っているせいか、気まずさが加速してしまう。
何とか話題を振らなければ…
「…そういえばスマホについていたタコのキーホルダーってさ、どこで買ったものなの?」
「…ヴィレヴァン」
「へぇ~」
どうしよう、会話が終了してしまった。
ヴィレヴァンにあのキーホルダーが売っているんだな。
「…あんたはさ、私のことなんも思わないの?」
「どうって…」
と何やら気になっているところがあるらしい。
「だって、私こんな見た目してるし…」
「確かに良く無い噂は聞いちゃうね」
「…だから聞きたいの、私に普通に接してくれる理由を」
普通に接する理由…か。
答えは決まっているな。
「クラスメイトだから」
「…それだけ?」
と北條さんはどうやら困惑していた。
でもそんな困惑も少ししたら笑顔に変わった。
「…あんた変わってんね」
「そ、そうかな」
北條さんはちょっと微笑みながら僕の隣を歩くだけだった。そして、そんな彼女の笑みを直視できなかったのは、きっと夕日がまぶしかったからだと俺は思っている。
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