ヤンキーと恐れられている女子が、実はむっちゃ可愛いということを俺だけが知っている。
そーた
落とし物
突然なのだが、みんなはヤンキーって知ってるか?
まともな生活をしない若者のことらしいのだが、俺のクラスでは一人の女子生徒がそう呼ばれていた。
彼女と目線が合うたび、みんなはこう言うらしい。
”人を殺すような眼をしている”
って言われている。いや酷すぎるかよとは思ったのだが、目が合うたびみんなは小声でそう言うらしい。
だからみんなは彼女の隣の席になると目が悪いとかうそを言って席を交換するやつも現れている。もはやいじめじゃないか?
そんな彼女は、今俺の隣の席に座っているのだ。
一目で見ればすぐわかる金髪、みんなは髪を染めたとか言っているらしいのだが、地毛の可能性も感じてはいないんだなと思ってしまった。
休み時間になるとその子は必ず席を立ってどこかへ行ってしまう。それを見計らったのか俺の友達の琉人がやってきた。
「…おまえ、よく
「?」
と話しかけて来たのだが、俺にはその理由がよく分からない。
ちなみに北條…というのがその恐れられている人だ。
「なんで?」
「だってなぁ、あんな怖い人と隣の席なんか怖くて怖くて仕方ないだろう?」
と一生懸命怖さを伝えてくるのだが、なおさらよく分からない。
「…何だったら毎日喧嘩してるらしいぜ?あぁ怖い怖い」
「…琉人はその現場を実際に見たのか?」
「いや、俺は話を聞いただけだぜ?」
こいつ、噂しか聞かないで本当のことかどうか確かめてない。
「…琉人は北條さんが喧嘩したと思っているのか?」
「...俺だってしていないって思いたい。けど…」
と何やら言いかけていたが、北條さんが戻っていることに気付いたのかすぐに自分の席に戻った。
するとすぐに授業が始まり、みんなが席に戻った。
昼休み、お腹がすいている中、俺はトイレに行こうとしたところ北條さんが女子トイレに入っていくのが見えた。するとスマホがするっと落ちるのが見えた。本人は気付いていない。
「あ、スマホ…」
落としましたよという間もなく北條さんは女子トイレの中に入って行ってしまった。
…誰かが踏んづけるかもしれないから持っておこう。
僕は女子トイレの近くで北條さんが出てくるのを待った。
「…遅いな」
女子のトイレ事情は知らないが、だとしても長すぎる気だけはする。
そんなことを思っていると北條さんがトイレから出てきた。
「あの!これ北條さんのだよね」
と俺がスマホを北條さんに渡す。
すると北條さんはちょっと不器用な笑みを浮かべて
「…ありがとう」
彼女はそう言い残して教室に戻っていった。
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