第81話

子どもはここで待機して、って、大人のお姉さんに言われていたのに。


トイレは仕方ないかもしれないけど、私に言われてもどうして良いかわからないのに。





走り去る背中も見えなくなってしまって、一層焦りを募らせた私は、先ほど説明してくれたお姉さんを探し始めた。


幾重にもかさなる子どもたちの集団。その塊から飛び出すと、少し離れた場所に停められたトラックのところで飲み物を片手に談笑するお姉さんたちを見付けた。






早鐘を打つ心臓を諌めながら、一度大きく深呼吸して足早に向かう。


説明をしてくれた、お姉さんを目指して。






初めて見る景色ばかりで、ただでさえパンクしそうだったのに。


こういう機会でもなければ話すことさえ無かっただろう派手な身形のお姉さんに向かって、震える声を絞り出す。







「……あの!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る