第8話 不和

大原箱の山岡が、毎度の様に、各店舗を集金して回っていた。直ぐ側で、業者がゴミの回収をしていた。


すると業者の人間が、山岡に近付き、山岡の頭部に発砲した。山岡は即死だった。


数日遡る。


その日、林田箱の林田は、各箱から、資金を預り、それを綿密に計算し、どのマーケットに振り分けるかを考えていた。


ただ、いつもより、アガリが少ない。大原箱からの「納税」が無かったのだ。


そこで林田は、大原の所へ出向くと、大原に事情を聞いた。


「うちは、他の箱みたいに手広く事業してないから、もう、勘弁してくれないか?」


と言うのである。


林田は冷たく答えた。


「ああ、そうかい。あんた後悔するよ、必ず。」


そして、今回の山岡殺しが起きた訳だ。


大原箱の離反は、街の均衡を揺るがしてしまった。


英介の家の喜多箱は比較的穏健な態度を採り、大原箱に同情的であったが、志乃生の家の髙﨑箱は、非常に強硬的だった。



両者の間に亀裂が入る。


事態を決定付けたのは、髙﨑箱による、大原箱の殲滅だった。


ある日、大原箱のメンバーが、アジトでアガリの計算をしていた。すると、一台のバイクがやってきた。


大原箱のメンバーは、それにまったく気付いていない。


バイクに乗っていた男がアジトに踏み込むと、持っていた道具(拳銃)で大原箱のメンバーを一網打尽にしてしまう。


大原箱の頭目を始め、幹部数名が殺害され、箱は壊滅状態となった。


志乃生はいつもの様に父の仕事の手伝いをしていた。すると父が言った。


「志乃生、もう英介に会うな。」


と。


「え?何で?何でよ!!」


志乃生が声を強めて父に言う。


「大原の奴は箱の調和を乱した。そんな掟破りな奴を英介の親父は守ろうとした。残念だけど、喜多箱とは、もう縁切りだ。」


父が冷たく言う。


「嫌!嫌よ!絶対に嫌!」


そう言うと志乃生は事務所を飛び出した。


林田が美波社長に問う。


「喜多のシャブは確かに貴重な収入源だけど、ビジネスとしてはやり辛い。実際のところ、シャブなんて質より量だよ。」


すると美波社長が言う。


「髙﨑縫製のやべぇブランド品の方が確かに需要がある。そろそろ、そちらに軸足を移した方が良いかも知れない。」


「何処行くんだ。」


父が英介に問う。


「志乃生の所だよ。」


英介が言うと父が冷たく返す。


「英介、もう諦めろ。あの子とは、もう会うな。」


その夜も月が静かに輝き、海面を照らした。キラキラ光る波が浜辺に打ち寄せる。


英介と志乃生はこっそりと、会っていた。浜辺に座る二人を月だけが見ていた。


ただ何も言わず、二人は海を見ていた。


英介は勇気を出して、そっと手を伸ばすと、志乃生の手に始めて触れた。


志乃生はにっこりと笑う。


「もう私達、会えないのかなぁ?」


志乃生の問い掛けたに英介は何も答えることが出来なかった。

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