第7話 通過儀礼
街には海水浴場が有るので、夏になると、家族連れなどの旅行客で賑わう。
ただ、街の裏側を知っている旅行客もいて、夜の旅館街では、公然と箱の兵が薬物を販売した。
厄介なことが起こった。隣の地区の豊原箱が進出してきて、土地の箱である前潟箱の縄張りを荒らした。
そこで、前潟箱は、勝手に縄張りで薬物を販売していた豊原箱の兵を始末(殺害)した。
豊原箱も黙ってはいなかった。
その日、三人の前潟箱の兵が、温泉旅館で湯に浸かっていた。
三人のうちの一人が先に湯から上がり、脱衣所で鏡に向かってドライヤーをかけていたところ、突然背後から後頭部を銃撃された。大量の血しぶきが鏡に飛び散り、その一人は即死だった。
外で銃声が聞こえたため、湯に浸かっていた他の二人が「何事か?」と顔を見合わせた時、浴場に殺し屋が入ってきて、その二人を射殺した。
大浴場が血の池となり、赤くなった。
豊原箱の狼藉は留まることを知らなかった。
その日、美波運輸、つまり美波箱の大型トラックが、交差点で停車した。前には乗用車が一台停車している。
やがて信号が青になるが、乗用車は動こうとしない。
トラックを運転していた美波箱の兵は、何度もクラクションを鳴らすが、乗用車は動かない。
遂に我慢の限界がきたその兵は、トラックをおりて、文句を言うために乗用車に近付いた。
だが、それが運の尽きだった。その兵は、乗用車の中から銃撃をうけた。
ベネリ M4 スーペル90の12ゲージのショットガンを至近距離から頭部に受けたため、頭が粉々になった。
犯人は豊原箱だった。
その後、犯人達はトラックの積み荷を強奪していった。
流石の美波社長も堪忍袋の緒が切れたようで、豊原箱に報復を誓った。
美波社長は若手を使うことにした。
その日もバイトが終わった後に浩と正広は、射撃の練習をしていた。そこへ社長が現れると、二人に言った。
「君らに頼みたい仕事があるんだ。君らを一人前の大人と見込んで。」
社長がそう言うと、浩と正広は、目を輝かせた。
一人前と認められた、大人の仲間入りだ。
翌日、二人は原付に二人乗りして、隣の地区に出掛けて行った。そして、到着すると、一件のゲーセンに入り、シューティングゲームを楽しんだ。
特殊部隊員を操作して、テロリストを掃討するゲームだ。
暫くすると、ゲーセンの向かいの床屋から、中年の男性が出てきた。
「おい、正広。奴が出て来たぞ。」
浩が言った。すると二人は、ズボンに挟んで、Tシャツで隠していた道具を取り出すと、素早くゲーセンの外に出ると、その男性に向けて発砲した。
男性がアスファルトに倒れ込む。二人は、倒れた男性に数発発砲すると、急いで原付に乗り、その場を立ち去った。
殺った相手の中年男性は豊原箱の頭目だった。
「浩!殺ったよ、俺、殺ったよ!」
原付を運転しながら、後に座る浩に、正広が興奮ぎみに言った。
二人は、遂に、ラインを越えたのだ。それは、この街の人間にとって、大人になるための通過儀礼であった。
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