第6話 花火
英介と志乃生は、いつもの様に、海岸の防波堤に腰掛けて、海を見ていた。
天高くそびえる入道雲が、真夏の青空一杯に広がった。
英介は、そっと志乃生の手に触れようとした、と、その時。
「先輩っ!お熱いですね~。」
浩と正広だ。
英介は慌てて伸ばした手を引っ込めた。
「何よ、暇人二人組っ!」
志乃生が浩と正広に言った。ちょっぴり、膨れっ面で。
「あんまりだなぁ、暇人だなんて。」
正広が言う。
「何の用だよ?」
英介が二人に聞いた。二人は答えた。
「先輩、今夜花火やりません?面白い花火があるんすよ。」
浩が言った。
そこで四人は、今夜8時に、この海岸で待ち合わせることにした。
美波運輸の敷地から、荷物を積んだ大型トラックが出て行った。港に向かって。
喜多農園で生成された阿片や髙﨑縫製が製造した限りなく本物に近い偽ブランド品を載せて。
美波運輸に五つの「箱」の頭目が集まっていた。
英介の父が率いる「喜多箱」、志乃生の父の「髙﨑箱」、取り立て屋の山岡が所属する「大原箱」、美波運輸の「美波箱」、そして、各箱の資金を預り、管理・運用する「林田箱」だ。
「喜多さんのブツは、価格は高いが、質が良いので、欧米で人気ですよ。今日の積み荷は予定通り、アムステルダムへ。」
美波社長が話した。
「うちのブランドもお陰様で大儲けですよ。」
髙﨑が話すと美波社長が返した。
「えぇ、新興国で人気ですね。消費も伸びてますし、特に、ジャカルタとかクアラルンプールで人気ですね。」
大原箱の大原が羨ましそうに話した。
「うちの箱もグローバルに対応できたらなぁ、今どき、みかじめ料じゃ、食ってくだけで精一杯だよ。」
すると、林田が答えた。
「大丈夫だよ。大原んとこの資金はしっかり運用してるから。」
林田は資金の運用状況を話した。
「香港と上海のマーケットに投じてる資産の一部を、シンガポールとウォール街に振り分けたよ。中国はリスクが高いからね。」
喜多が問い掛けた。
「うちのアガリはしっかり洗浄してくれよな。」
それを聞いた林田はにんまりすると、楽しそうに答えた。
「ケイマンやバージン諸島、リヒテンシュタインとモナコにそれぞれ突っ込んであるから心配ないよ。」
夜8時。英介、志乃生、浩、正広の四人は海岸に集まった。
浩と正広は、大きなバッグを持ってきた。「花火セット」が入っていると言うのだ。
浩は満面の笑みを浮かべると、バッグの中の「花火セット」を取り出した。
「じゃーん!すげぇでしょ?」
と、浩。
「何だ。クーガーじゃん。」
志乃生が答えた。
「えっ!志乃生先輩!もっと驚いて下さいよぉ!」
浩が言うと、志乃生が答える。
「だって、道具なら、うちのお父さん、一杯持ってるし…。」
英介がバッグを覗きこむ。
「あっ!Cz75だ!俺の親父のと一緒のやつだ。」
正広がガッカリしながら答える。
「えぇ!英介先輩も知ってたんだ。」
英介は二人の後輩に呆れた様に切り出した。
「あのなぁ、俺も志乃生も、家が箱なんだよ。小さい時から分かってるよ。」
そんな遣り取りの後、四人はそれぞれ好きな道具を手に取ると、海に向かって発砲した。
「いいぞ、浩!やっちゃえ!」
英介がそう言うと、浩は、月に照らされた水平線目掛けて、カラシニコフをフルオートした。
「俺も!」
と言って、正広がUZIを撃ち込んだ。
英介は、空き缶を拾うと、テトラポットにそれを置いて、離れた所からSIG SAUER P220を発砲した。
見事命中だ。
「じゃあ、私はこれ。」
そう言って志乃生はM4カービンに擲弾を装填すると、浅瀬に乗り上げて、動かなくなった、錆だらけの漁船に向けて発射した。
ダンッ!!
閃光と爆音が静かな月の下の海辺に轟いた。釣り船が炎上している。
四人は、その赤々と燃えて、天に昇る火柱をいつまでも眺めていた。
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