第5話 春風

 春一番が運んできた砂粒を、底が見えて取りづらくなったお掃除シートで集めながら、波音のような春風の音を聞き、その風が咲き終わった牡丹を揺らすのを、窓越しの虹色の陽に邪魔されながら、しばし時間を止めて眺める。


 時間がふたたび動き出したら、網戸の目から侵入してくる春風と伸びすぎた前髪を戯れさせてもいいかも、とか思ったりする。

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言葉の表現にこだわってみたショートショート 一郎丸ゆう子 @imanemui

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