美しい学園の日常に忍び寄る影と秘密が、少女たちの心を揺らす物語

華やかで規律正しい学園生活の描写と、不可解な影や静まり返った廊下がもたらす異質な恐怖とのコントラストが見事に効いていました。
明るいステンドグラスの光に満たされた日常があるからこそ、ふいに訪れる薄暗い非日常がいっそう鋭く迫ってくるという、その緩急の巧みさが見事でした。

また、物語にさりげなく置かれた小物の数々が非常に印象的でした。主人公の心の拠りどころであるペーパーナイフ、転入生を示す下駄箱の花、夜の廊下に響く鍵の金属音など、それらは一見ただの道具にすぎないのに、読むほどに「何かを示しているのでは?」という予感が膨らみ、ミステリとしての期待感を強く掻き立てられました。

学園という整った箱庭の中で次に何が起きるのか、どの小さな違和感が真相へと繋がるのか、その好奇心でページをめくる手が止まりませんでした。

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