第4話
朝、意識が覚醒して一回目の呼吸音を自分自身で認識するその瞬間に、その日がどんな一日になるかが何となく分かる。
AM9:00、普段よりも随分と遅い起床。アラームの音で目を覚まして、そのまま三回深呼吸をする。
……なんだか、今日は嫌な予感と良い予感が五分五分で少し寝覚めが悪い。
残留した昨夜のアルコールのせいかもしれない。昨日のお酒は安物だったからな、なんて言い訳をして、自分自身のご機嫌を取ろうとしてみるけれど、どうせこんな事は日常茶飯事なので気に留めることなくむく、とベッドから起き上がった。
リリリン、とベッドの足元から音が鳴る。
寝室のカーテンと窓を開け、吹き込んだ風のからりと乾いた様子に何処となく秋の気配を感じて、スマホの日付を確認するとどうやら昨日は秋分の日だったらしい。
夜の湿度はまだまだ高いけれど、朝の風が心地良いというだけで気分は幾らか晴れてくる。柔く靡くレースを避けながらタッセルでカーテンを留めてから、動きやすい服に着替え、音の主と共にリビングへ向かった。
カウンターキッチンの奥でキャットフードをお皿に装っていると、先の音の主がふわふわ、すりすりと足元に擦り寄って来た。
「ニャア」
「ふふ、待っててよアンジュさんてば」
まったくマイペースに催促をしては、早く食べ物を出せと急かす食いしん坊の彼女は白猫のアンジュさん。
丁度一年前の今頃、深夜に帰宅した際に家の前で拾った保護猫だ。足が少し短くて、毛が物凄くもふもふしている。
見つけた時はマンションのエントランス前の植木の中で丸くなっていたから、一瞬コンビニの袋かと思った。それが、今より小さくて幼いアンジュさんだった。
「ンニャ」
「美味えですかい、そうですかい」
「ンニャンニャア……」
「はは、食べながら喋ったらお行儀悪いよ?」
私が話しかけると、アンジュさんが瞬きをして答えてくれる。それが何とも愛らしくて、この時間が私の何よりの癒しだったりする。
アンジュさんの器が瞬く間に空になったことを確認した後、歯磨きをしたら今度は私の朝食の支度をする。
今日はお肉の気分だったから、ベランダで小ぢんまりと育てているバジルとミニトマトを摘み取って、それらを使って鶏肉のプレートを手早く作って食べた。
ちなみに、ベランダのバジルはアンジュさんの密かな好物らしく、時々洗濯物を干す時についでにリードを装備した彼女を外へ出してあげると、知らずのうちに端から齧り取られてしまう。少し怒っても知らんぷりなので、隣に小さなアンジュさん用の鉢植えを用意したぐらいだ。
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