第5話

身体に一気に寒気が走る。



 駄目だッ……嫌な事ばっかり考えちゃ……ポジティブ……ポジティブに考えないとっ……ここから出なきゃ……戻らなきゃ……逃げなきゃ……犯人の隙を突いて……諦めちゃ……諦めちゃ駄目だッ……。



 呼吸を整え冷静になったら嫌な事実が判明してしまう。




 私……動けなかったのは手首だけだと思っていたのに足首も……首にまで……金属の拘束具がはめられている……。





 必死だった……とにかく、外したくて……逃げたくて血が滲み出ている事が分かっても、痛みが走っても、何とか外せるんじゃないかと思い何度も何度も金具に抵抗するように引き抜こうとしてしまった。




 同時に目元の布地を擦り付けて剥がそうとするが固く縛られていて上手くいく筈も無くて、一呼吸終えた後にまた試みようとした時だった。




 !?




 ガチャ……。




 う、動いちゃ……動いちゃ駄目だッ……じっとしてなきゃ……。



「あれ、今、物音がしたと思ったんだけどな……俺の勘違いだったのかな」





 優しげな落ち着いた若い男の声色。




 お願い……早く出ていって……緊張と恐怖で入ってきた瞬間に無意識に息を止めてしまって口の中に唾液が溜まってしまっているから……ッ。



 けれど、抑えきれる筈何てなく、不自然と静かな部屋に私の喉からゴクッと大きな音が部屋に響く。

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