第33話

「藍佑はすごく恵まれているから周りの人は仲良くしてくれるけど、みんな心のどこかでは“喋れない男の子”って位置付けされてるんだ。たぶんそれを本人も分かってる」




だけどウタちゃんは違うでしょ?


お兄さんに見つめられて心臓がはねた。いろんなことを見透かされてしまった気持ちになってやっぱりわたしはどうしようもない気持ちになる。


花園家の人は、わたしのことをどうしようもなくどうしようもない気持ちにさせるのが好きみたいだ。


ふぅ、と気付かれないように息を吐いたけれどたぶん気付かれてしまって視線を泳がせた、隣の人が飲んでるピンクのやつ、美味しそう。


他のことを考えれば、ふっと優しげに笑われる。どきどきした。




「俺だけじゃなくて、両親も、藍佑もウタちゃんに感謝してる」


「そんな、」


「ウタちゃんにとっては普通の、いつもの日常と変わらないかもしれないけど世間知らずな弟にとっては毎日が輝いてるんだよ」




そうなのかな、と思った。少しも考えずに、たしかに、と納得する。


アイは世の中を知らなさ過ぎた。わたしが全部教えてあげたの、わたしが。


藍佑の輝く瞳が見たくて、楽しそうな表情が見たくて普通の、すごく平凡な日常を教えてあげた。そうしたらわたしにとって普通のことだったはずなのに、アイが隣にいることで輝いたの。たぶんそれはアイにも言えることなんだ。


だってアイはわたしのことが死ぬほど好きだから。

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