第28話

「いい、ひとりで帰れる」




考えた、わたしはギリギリを考えた。


藍佑に家まで送ってもらえば、“ギリギリ”まで一緒にいたことになるのかもしれない。だけどわたしはきっとまた、家まで送る、とぶっきらぼうに言うはずだ。


アイを家まで送って玄関の前でまたギリギリを考える、送って行こうか、と聞かれる。頷いてアイに家まで送ってもらう。思考がループして動悸がする、やめよう、考えるのはやめよう。




「ひとりで帰る」




もう一度言うと、寂しそうな顔をするから言ってやった。




「明日も、明後日も、これから毎日わたしと一緒に帰るんでしょ?」




わたしの放課後を独り占めする贅沢な男なんて、アイだけだよ。


ちゃんとアイの目を見て、思い切り睨んで言ってやった。


パッと笑顔になる、単純な男の子。わたしのハートを独り占めする贅沢な男も、藍佑しかいないんだよ。




「じゃあね、アイ」




最後はカッコよく決めて、スカートをひらりとひるがえす。


じゃあね、と後ろから聞こえた気がしたけどそれは所詮、気がしただけで本当に聞こえたわけじゃない。

だからわたしは振り向かなかった。

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