第20話

二人でコンビニを出た、隣の藍佑は何となく恥ずかしそうにしている。たぶんわたしの気のせいじゃないと思う。


自転車を押して、その隣にアイ。




「また今度寄り道して帰ろうよ、今度は自転車じゃなくてちゃんと歩いてくるから」




わたしが喋る、アイは無言で頷く。


楽しそうな顔、幸せそう。本当に幸せそうだ。幸せそうなアイを見ていたら、急に殴りたくなってきた。どうしてわたしに声を聞かせてくれないの、って。


喋ってみせてよ、今すぐあの夏に向かって走って声を取り戻してきて。今度は落とさないようにしっかり掴んで持って来て。もう絶対に置き去りにして来ないように縛り付けてあげるから。


あのね、アイ、喋って。自分の言葉でまわりのみんなを幸せにしてあげて。愛してるって大事な人に伝えてあげて。


わたしに聞かせなくてもいいから、バレないように陰で盗み聞きするだけでもいいから。どんなに小さくてもいいから。


喋れない弱虫な花園藍佑のことが好きだと気付いた、キッカケはよく分からない。


あっ、と思う暇もなく心にストンと落ちてきた想い。きっと誰だってそんな経験があると思う。わたしは初めてだからよく分からないけど、きっとみんな同じこと感じたことあるでしょ。




「今度はクレープ食べたい、知らないとか言わないでね」




わたしの言葉にニィッと笑うから、どうやらクレープのことは知ってるみたい。


少しだけアイがわたしに近付いて歩く。ちょっとだけ熱が近付いた。ちょっとだけ好きが増えた。




「ねえ、ゆっくり歩いてるの、何でなのか分かる?」




ずるいだなんて、言わせないよ。喋れない、喋らない藍佑のほうが狡いんだから。




「言ったでしょ、アイとギリギリまで一緒にいたい」


「っ」


「嘘か本当か、アイが決めていいよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る