第19話
心の中がぐちゃぐちゃだ。
わたしは声をあげて笑うことが出来るのに、アイは口角を上げて、目じりに皺を寄せて笑うことしか出来ない。そんなアイが憎い。
もっと笑ってよ、もっと楽しそうにして。わたしと喋って、声を聞かせて。
ああ、って思った。ねえ、分かっちゃったよ、アイ。初めてアイと一緒に帰ってみて分かったよ。アイなんかに聞かなくてもあの音の正体が分かったよ。
わたし、アイが好き。
そう自覚したら鼻がツーンと痛くなって涙が溢れ出してきそうになるから、さらに笑って誤魔化した。何も気付かないアイはそんなわたしを見てさらに楽しそうに音もたてずに笑う。
声が出ない理由なんて知らない、だって喋ってくれないんだもん。A4のノートに綺麗な字で書いてくれることも無い。
美味しそうにポテトチップスを食べる藍佑を見たら心にじわりと何かが沁みてくる、これがきっと愛情だ。それと同時に目の前の優しい男の子をぐちゃぐちゃに傷付けたくなる、その繊細な心を抉ってやりたい。
なんて幸せなんだろう。なんて切ないんだろう。グッと心の底に感情を沈み込ませた、だいじょうぶ、だいじょうぶ。
「食べたら帰ろうか、家まで送るよ」
じっと見つめて言えば、首を横に振ってノートに文字を書こうとする。
「だめ、書かせないよ、アイが喋れないのがいけない」
ペンを持つ手を掴んで意地悪を言えばちょっとだけ泣きそうな顔をする。
そんな可愛い顔したってだめ、アンタの話なんて聞きたくない。
「アイとギリギリまで一緒にいたい」
「、」
「って言ったら、どうする?」
ずるい、そう口が動いたのをわたしは見逃したりなんかしない。
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