第17話

目を輝かせるアイを見たら、自然と頬がゆるんだ。


すぐに辿り着いたコンビニに自転車を止めた。自動ドアをくぐる前に二人で顔を見合わせて思わず笑った。くすくすと、音も立てずに二人で笑って一緒に自動ドアをくぐったら、少し足を進める速度が上がって、もっと笑った。


わたしを見て、何かを言いたげに口を開けたり閉めたりするからさらに笑っちゃう。そうしたらアイが照れて目をそらすからまた笑った。


可愛い藍佑、ほんとうに可愛い。




「せっかくだから、何か買おうよ、アイのコンビニデビューのお祝いで」




こっちおいで、と腕を引っ張る。


お菓子のコーナーに行くと安い駄菓子に、ちょっと値の張るお菓子まであった。うん、なかなかの品揃え。アイのデビューにぴったりだ。




“すごい”




小さく口を動かした藍佑をわたしは見逃さなかった。




「ここに来れば何でも揃うよ、食べ物だけじゃなくて日用品もね」




コンビニの説明をしている自分に何だか笑えてくる。


楽しいね、アイ。こんなに楽しいの、わたし、久しぶりかもしれない。


こんなに便利なお店を知らないだなんて、藍佑お坊っちゃまは今までどんな暮らしをしてきたの?


想像も出来ない花園家、アイはどうやって育てられたのだろうか。


愛されているはずなのに。


たくさんの愛情を受けて育ってきたはずなのに、愛していると伝えることの出来る声を、中学三年の夏に置き去りにしてきてしまった。

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