第16話
ゆっくり、これでもかってくらいゆっくりと歩いた。二人分の小さな足音と、自転車のチェーンの音が混ざりあって何だか青春を感じる。風が吹いてスカートが揺れれば、アイがちょっと恥ずかしそうな顔をした。
えっち、ってからかえばもっと恥ずかしそうな顔をするから今度はわたしまで恥ずかしくなる。
自転車のハンドルを握る両手が汗で少し湿っていた。
今更だけど、どうしてわたしたちは仲良くなったんだっけ。考えても思い出せないのは本当に仲良しだからかもしれないね。
大嫌いな、藍佑と、仲良しなわたし。
相反するこの気持ちをどうすることもできなくて。だけどどうしようとも思わない。どうにか出来るのはきっと藍佑だけだよ。
「アイって、病院に住んでるわけじゃ無いんだよね」
尋ねると、コクコクと首を縦に振る。
「病院の近く?」
あ、あの高級住宅街でしょ。
そう言えば困ったように笑った。
アイはどうやら、お金持ちだとかお坊っちゃまだとか言われるのが嫌らしい。
「あそこの近くにコンビニってあると思うんだけど」
住宅街から大通りに出て少し行けば藍佑が知らないというコンビニがあるはずだ。
「今から行くんだから、知らなくてもいいか」
アイが知らないとしても今からそれを知ることが出来る。ずっと知らないままじゃないんだからいいじゃない。大丈夫、わたしが教えてあげるよ。
隣の喋れない男の子を見つめた、口角をゆるりとあげる、微笑んだ。
ありがとう、と口が動いた。お願いだから、声を聞かせて。
「もうすぐだよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます