第12話
“歌が好き”
綺麗な文字で告白されたあの日、わたしは言った。
「アイのことなんか、好きにならないから」
好きになんか、なってやらない。
震えた声を返せば、喋れない男の子は恥ずかしそうに笑った。倒れるんじゃないかってくらい熱い顔はきっと、アイに隠しきれないくらいに真っ赤なはずだ。
アイは人の心が分かる人。だって人の感情に敏感な弱虫だから。
“すきだよ”
今度は口をぱくぱくさせて、音の無い声でわたしに純粋すぎる気持ちを伝える。
何度言ったって、わたしの返す言葉は変わらないのに。
勝手にわたしの、心の一番奥にある気持ちをひとかけらだけ持ち出して、放課後の教室でそのカケラと一緒にわたしの片手を両手で包み込んだ。
アイが恥ずかしそうにはにかんで、行こう、と言葉にならない言葉をこぼして歩き出す。
これが、アイとわたしが初めて手を繋いで帰った日。
藍佑の手を振り払うことはしなかった。かわりに握られた手に少しだけ力を入れる。
アイ、アンタ、狡いよ。
わたしには喋らせるくせに、自分は一言も声を聞かせてくれないの。
そんな藍佑のこと、死ぬほどキライなの。
たぶんアイは、わたしのこと、死ぬほど好きでしょう?
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