第6話
“アイ”と“ウタ”、そう呼び合うようになったのは出逢ってすぐ。まだ夏にもなっていない時。
ノートに綺麗に書かれた“ウタ”という文字を見てわたしは“アイ”って呼んだ。そうしたらアイが照れたように笑うから、わたしも笑ってちょっと照れた。
あの日からノートは何冊増えたんだろう。
「いらっしゃいませ」
コンビニについてもわたしたちの手はゆるく繋がれたまま。もうすぐ夏。繋がれた手は少しだけ熱いけどお互いそんなことは気にしない。
店員の目がちょっと痛い、カップルかよって嫉妬の目。わたしたち恋人同士じゃないんだけど。
それなのに手を繋いでいるのは、弱虫の癖に、ヘタレのくせにちょっと強引なアイのせい。
だいたい、いつもわたしたちが買うのは小学生のお小遣いでも買える程度の値段の小さなチョコ数種類。一緒にレジに持って行ってお金を出し合う。
たとえば普通の友達同士なら、1円あるよ、と小銭を出したり、細かいのないから、と片方が先にお金を払って、あとでお互いで精算したりできるけど、わたしたちはそんなやり取りが出来ない。
「アイ、小銭ぜんぜんないね。わたし細かいのあるから、先にアイが出して」
藍佑の財布を覗き込んでわたしがどうやってお金を払うか決める。別々に買えばそんなことをしなくてもいいのだけど、いつも一緒にレジに並んでお金を出し合う。
アイのお財布事情はわたしに丸分かりなのだ。
「はい、お金」
コンビニから出て小銭を渡そうとすれば、困ったように微笑むアイ。
どうせ、俺の奢り、とか言いたいんでしょ、格好つけちゃって、たった数十円なのに。
「そんなことしても、次に買う時わたしが全部払ったら意味ないでしょ」
呆れたように言えば、おずおずと手を出す。
このやり取り、何回目だと思ってるの、ってちょっと息を漏らした。
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