第5話

学校からコンビにまでの道は飽きるくらいに何回も通った道だ。それでもちっとも飽きないのは隣にアイがいるからなのか、それとも他に違う理由があるのかはわたしには分からない。


アイと一緒に歩くときは、いつもわたしが一方的に喋ってアイが音の無い相槌を打つ。


そうすることしか出来ないから何とも思わないけど、返事が帰って来ないのは、時々ちょっと寂しくなったりもする。ほんとうに時々、ちょっとだけ。



普通に喋って会話をすることのできる友達と話しているときの方が楽しいって思うことは、わたしだけじゃなくて誰でもあると思う。でも、だけど、結局、わたしはアイといる時間が一番楽しいんだよなぁ。


わたしが一方的に喋っていても、A4サイズのノートでゆっくり会話していても、それが一番楽しかったりする。



だけど、わたしはアイのことが、大嫌いだ。



藍佑が喋れないのは先天性じゃないし、治らない病気でも無い。出会ったばかりのわたしは、すぐにアイの声を聞くことが出来るようになると信じていた。

だけど一向にそれを聞くことが出来ない。


弱虫だから、今の喋れない自分でも何も不自由なく生活できているから。アイは甘えているんだ。


喋ることが出来なくても友達がたくさんいる。喋れなくても、自分の思いを聞こうと待ってくれる人たちがいる。


だからアイは、喋れないんじゃない、喋らないんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る