第3話
アイは喋れないけど友達は少ないわけではなく、むしろ多い方かもしれない。休み時間は仲の良い友達の輪に入って、楽しそうに会話をしている。
ときどきノートに、男の子にしては綺麗すぎる字を書いて会話に混ざって、その字を見て、みんなが笑ってアイも楽しそうに笑うんだ。絵も上手いアイはよくノートに絵も書いていて、それを見てまたみんながたのしそうに笑う。
藍佑は、みんなから愛されている男の子。
二重のすこしたれ目が、藍佑を優しく見せる。実際にアイは優しすぎる男の子だ。2つ年上の兄からは溺愛されているらしい。
突然、きゅっと後ろから手を掴まれた。
振り返らなくても分かる。わたしの後ろを歩いているのはアイしかいない。
「コンビニ寄って帰る?」
振り返って尋ねれば、アイはキラキラと目を輝かせて、うん、と大きく頷いた。わたしより背が10センチも高いクセにどうして子供みたいに見えるんだろう。
“早く行こう”
口をぱくぱくと動かして伝えるアイ。
きっとこれを、読唇術とは言えないけど、アイの言っていることが理解できるようになったのはいつからだっけ。
口をぱくぱくさせるアイを、わたしは見つめる。アイの言葉が見えるようになったことは少し誇らしい。だけど、わたしはいつも途方に暮れる。
ゆるく繋がれた手を見つめた、こんなことしても、意味無いんだよ、アイ。
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