第3話

「なあ、その制服って……お前、聖女の生徒なのか?」

と、正面の男が聞いてくる。


私が着ているのはグレーのジャンパースカートとボレロ。

その下には白い丸襟のブラウス。


確かに聖華女子高校、通称“聖女”の制服だ。


レトロな雰囲気のこの制服ってそんなに有名だったの?


「それがどうかした?」


逃げ出したい気持ちを隠して、言葉に力を込めた。


「聖女のお嬢様がこんなとこで何してんだ?」


「何でもいいでしょ。それに、私はお嬢様じゃないからっ」


お嬢様学校と言われる聖女だけど、全員がそうとは限らない。


中等部から聖女に通っていても、小学校は公立だった私は周りになかなか馴染めなかったし、今では正真正銘、お嬢様なんかじゃない。


「ふっ、お前の名前は?」


鼻で笑われた……。


「知らない人には教えられませんっ」


何かあれば手の中の防犯ブザーを鳴らそうと、強気で答えると、

「お前、聞かれた事に答えろよ!」

隣にいた黒髪の男に肩を小突かれた。

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