第2話

気が付けば、機械の音に負けないくらいにバイクの音が大きく聞こえてくる。


妙な胸騒ぎを覚えて駆けだした。


なのに――。


「待てよ!」


そう背中から声を掛けられた。


振り向かなくても分かる。


バイクを走らせていた不良だ。


絶対に関わりたくなくて、足を速めた。


「無視すんなっ」


すぐ横を走り過ぎたバイクが停まって、降りてきた背の高い男が目の前に立ちふさがった。


ド派手な金髪で両耳にピアスを付けたその男が鋭い視線を向けてくる。


着くずした紺のブレザーとグレーのズボンは、この辺りでよく見かける駅向こうの男子高のものだ。


威圧感に耐えられずに視線を逸らして逃げ出そうとしたのに、バイクから降りてきた男達が次々と集まってくる。


上着はトレーナーだったりスカジャンだったりさまざまだけど、ズボンは同じもの。


揃いも揃ってカラフルな髪色で、黒髪の一人が逆に目立っている。


この人達……制服で堂々とバイクを乗り回しているなんて。


不良が多いっていう噂は本当だったんだ。


それにしても、この状況はまずい。


どこにも逃げ場がなくなった。


気付かれないように、スクールバッグにぶら下げている防犯ブザーを握りしめた。

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