第8話

「……分かった」


大きく一つため息をついてベッドから立ち上がると、蒼はドライヤーを持って部屋を出ていった。


洗面所からドライヤーを使う音が聞こえる。


今度は私が彼の髪を乾かしてあげようかな。


髪を乾かしてもらうのって、すごく気持ちいい。


蒼が上手だからかもしれないけど。


一人暮らしが長いからなのか、何でも自分で器用にこなしてしまう彼が、やらせてくれるのかは分からないけど。


私が蒼にやってあげられる事って、朝ご飯を作るくらいだもの。


私も何かの役に立ちたい。


そう思いを巡らしていると、ヒンヤリとした空気を纏った蒼が、ベッドにもぐり込んできた。


すぐに抱きつくと、「子供みたいに、あったかいな」と、抱き締め返してくれる。


これでやっと眠れそうだ。


彼の腕の中でウトウトしていると、

「……お前は、俺の我慢の限界を試しているのか?」


「ん?」

蒼の声に、薄く目を開けた。


「その手は何だ?」


そう言われて自分の手を意識すると、筋肉質の素肌の感触がする。

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