第4話

確かに、俺の口から天使なんて言葉は似合わない。


だけどな、本当に天使みたいな笑顔だったんだ。


お兄さんが幸せになりますようにと言って、四つ葉のクローバーを掌に載せてくれたその子が、まるで天使に見えたんだ。


化粧っ気のない真っ白な肌に大きな瞳が印象的で、きちんと着た制服が真面目な生徒だと示していた。


冷静になると、天使だなんて馬鹿な事を考える自分が信じられなかった。

 


数日経ってもそのクローバーを本に挟んでいると、佐倉がゼミの女の子に頼んで栞にしてくれた。


それを見る度に女の子の笑顔が浮かんで、その記憶は少しも色褪せる事はなかった。


結局、大学院には進まず親父の経営するスポーツジムに就職した俺は、その選択を後に酷く後悔する事になる。

 


その子が今、目の前にいる。


女の子の誘いなんて煩わしいだけで、ジムの会員とは付き合えないと公言していたにもかかわらず、一緒に食事に行くことを承諾していた。


積極的に誘ってきたのは、一緒にいた女の子の方だったが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る