第2話

天使のような笑顔に、さっきまでのささくれ立った気持ちが癒される。


最近、進路の事で親父と揉めることが多かった。


大学院に進みたいという俺の希望は一蹴された。


今も、自分の意見を押し付ける親父からの電話を途中で切ったばかりだ。


このままでは、親父の会社の跡を継がされ、結婚相手まで決められそうな勢いだ。


離婚した母親に連れられて米田の家を出たというのに、納得がいかない。


そんなイライラも忘れて、久しぶりに笑えた気がする。


普段から表情が変わらずクールと評される俺だが、彼女の邪気のない愛らしい笑顔は、硬い表情を崩す力を持っているらしい。

 

彼女と別れてベンチに座って本を開いた。


だが、その子の視線を感じて、本の内容なんて頭に入っていなかった。


他人の視線なんて全く意に介さない俺なのに、その子の視線は気になって仕方なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る