第31話

チャマの復帰祝いを兼ねて、ライブをやることになった。

新しくアルバムを出したわけじゃないから、ベスト的な内容のやつね。

今日はその打ち合わせなんだけど…



―――はぁ~い、こんにちは☆


「ほんとに来たんすか」


―――あっら、そんな顔するの?誰のおかげで由文くんがスムーズに復帰できたと思ってるの?


「う…まぁそうですけど…」



それを言われると弱い。

事務所やレコード会社をはじめとする関係各所へ根回しに行く時、この人はあらゆる力を使ってサポートしてくれた。

そのうえ、



―――由文くんのお父さんに殴られずに済んだのは誰のおかげー?


「あーあー、はい、あなたです」


―――藤原くんの実家までついて行ったのはー?


「あなたですゴメンナサイ!ほんとその節はお世話になりましたっ!」



そうなんだよ。うちの父親がキレかけた時、一緒に頭下げてくれたんだよ。

駄目だ…もう俺、一生このオッサンに頭が上がらないような気がする。かと言ってなぁ。



―――じゃあこのライブが終わったら、由文くんを借りるわよ。


「………」


―――心配しないで、一曲だけだもの。そんなに長い間拘束するわけじゃないわ。


「本当でしょうね」

『藤くん、そんな疑わなくても』

「チャマ…嫌だったらすぐ帰って来いよ」

『うん』


―――あのね、アタシが音楽関係でそう変なことすると思う?



思わないから逆に心配なんじゃないか。

こいつが本格的にあんたに取り込まれたらどうする。

という言葉を飲み込み、椅子に寄りかかった。



―――まぁったく、いつまで経ってもつれない子たちで困っちゃう。やっぱり奏ちゃんに期待するしかないかしら。


『は?』

「奏子が何?」


―――彼女にベースを習わせて、将来アタシの曲を弾いてもらうの。


「じょ、冗談じゃねーっ!」

『つぅか計画が遠大すぎる!』

「あんたいくつまで現役でいる気だよ!?」


―――んまぁあああ!!つくづく失礼ね、夫婦揃って!!

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