第27話
「愛してるよ、チャマ」
『俺も』
「戻ってきてくれて本当に嬉しい」
『あは…だったら、カナに感謝だね』
「なんで?」
『俺たちが戻って来た一番の理由は、カナの言葉だから』
「……」
『俺が持ってた写真を見て、いきなり“パパ”って言ったんだ。特に何も教えてないのに』
「まじで?」
『大マジ。ぶっちゃけ、それが決め手だった』
「すげぇな」
『でもま、何となく分かったのかもね。俺、四人で写ってる写真そこらじゅうに飾ってたから』
「そうなんだ」
『そうよー。娘に感謝しなよ、パパ!』
二人でもう一度笑いあったところで、寝室の方から何か聞こえてきた。
あ、お姫様のお目覚めですね。
大人同士の話が一区切りついた途端に泣き出すとは、空気が読めすぎてて困っちゃうよ。
早く行ってやらなきゃ、あぁでも腰ちょーダルいし、って俺が焦ってると、藤くんが笑った。
「俺が行く」
『えっ?』
「いいから、チャマは寝てな」
『え、で、でも…』
Tシャツだけ着ると、結構な勢いで寝室へ飛び込んでいく。
確かにもうミルクとかオムツとかいう年じゃないから、任せても大丈夫かもしれないけどさ。
もう一度ソファに転がり、全身脱力した。
『はぁ~…』
宵闇が迫る部屋に、ぐずるカナとあやす藤くんの声が聞こえてくる。
何だよ、ずいぶん面倒見いいじゃん。
変われば変わるもんだなぁ。
まぁ元々あの人子供好きなとこあったし、そんなもんか?
でもなー、戻って来るなりこれじゃあ、この二年間さんざん躊躇してた俺がバカみたいな気もする。
…こんな不満をこぼせるのも、一緒にいるからだということに気づいて、なんだか照れくさくなった。
あ~あ。そろそろ俺も起きるか。
あの二人にメシ作ってやんないと。
一人は成長のために、もう一人は…とにかく栄養つけさせないとね!
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