第19話

買い物帰りにお茶してま~す。


妊婦体操とかいうのやらされた…(笑)


近所の人が和菓子くれたぞー!


定期検診なう☆


なんか俺、帝王切開になるかもだってー


ヒマだからぬか漬け作ってみた!うまい!


やべぇギター弾けなくなってきてる(*_*;


だんだんお腹出てくると、楽器も持ちにくくなるなぁ。


さっきから気持ち悪い…これがつわり?


久々にハイロウズ聴きながらベース触ってるぜ♪


赤ちゃんは順調です!おやすみ!





…藤原でもヒロにでもなく、俺のところに来る。

ほとんど一行報告って感じだけど、意外と写真もついてくる。

いい感じの田舎で、チャマが笑ってたりとか。


誰にも言わない。

いや、チャマはもしかしたら“ばれても構わない”と思ってるのかもしれないけど、俺は言わない。


時が満ちるのを待とう。

チャマと藤原がそれぞれ一人で成熟して、お互い本当に求め合うようになる、その時まで。








―――半年後。


メールの表題は『母子ともに健康!』だった。

どこかのベッドで、元気そうなおちびさんが寝ている写真。

性別まではわからないが、顔が真っ赤で、きっとよく泣く子なんだろうなと思えた。


チャマの人差し指にからみつく手は冗談みたいに小さくて、よく生まれてきたな、という感動があった。

知らず、涙がこぼれた。


藤原とヒロに転送した。

ヒロも見るなり泣いたと言っていた。

藤原から返信はなかった。



チャマの携帯は繋がらなくなっていたけれど、あっちからヒロに電話があったらしい。

ヒロは、少し話せたよ、と嬉しそうだった。






それが最後だった。

ふっつりと、チャマからの連絡は途絶えた。


便りのないのは良い便り。

そう思うことにした。




新曲のリリースもライブの予定もない上に、チャマがラジオに出てこないということで、世間では色々な噂が流れた。


まぁ、そういうこともあるさ。

のんびり構えていよう。


完全にヒマになったわけじゃないし、あいた時間はドラムやコーラスの練習にぴったりだ。

チャマが戻って来たら、また合わせないとな。


なぁ、藤原。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る