幕間

side升

第15話

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夜中に電話が鳴った。

それも携帯じゃない、家電だ。


一人びくついて目を覚まし、次の瞬間、親しい誰かに何かあったのだろうかと考える。



「はい、もしも…」

「おっはよぉ~、升くぅ~ん?」

「は?」



ものすごいドスのきいたオッサンの声。

寝ぼけた頭には、いささか強烈すぎた。



「どちら様ですか」

「う~んもう、わかってるくせに。あたしよ、ア・タ・シ(はぁと)」

「…ちっ」

「年上相手に舌打ちとか、礼儀がなってないわね」

「あ~~っ、もう!何の用です!」

「あらやだ。由文くんから連絡いってない?」

「えっ?」

「まぁ、今日中にはあるでしょ。心配しないで」

「え?え?」


「じゃあね!あたしの役目はこれで終わったわー」

「ちょっと待て!待ってください!!」

「何よ、うるさいわねぇ」

「チャマが戻って来るんですか」

「だからそう言ってるでしょ」

「一人で?」

「馬鹿言うんじゃないの。二人でよ」

「……」

「あー良かった、これでまた堂々とあのコを誘うことが出来るわ」



そっちこそ馬鹿言ってんじゃない、とは言えなかった。

ただ、ありがとうございますと言う気にもなれなかった。


今までずっと、俺たちと同じようにではないかもしれないけれど、チャマのことを気遣ってくれた人。



「それにしても、妊娠するゲイなんて初めて見たわ」

「チャマはゲイじゃありません」

「あらそう?ま、病院の先生たちも判断に困ってたみたいだしねぇ」

「とにかく…藤原に連絡します」

「そうね。それがいいわ」



余裕たっぷりに笑う憎たらしい50代のオカマを想像して、げんなりした。





電話を切った後、3年前のことを思いだす。

チャマがいなくなった日のこと。



そうだ。

あの日も、こんな雨模様だった。

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