第14話
「ごめん」
「藤原、謝るのは俺たちにじゃない」
「そうだよ!おまえチャマに何した!何言ったんだよ!本当なら、無理してでも笑って、チャマ心配すんな、大丈夫だって、そう言うべきだったのに…!」
「……」
「俺は…、チャマがあんな風に哀しそうに笑うとこなんか、見たくなかった…」
ヒロの声が突き刺さる。
痛い。
でも、チャマが味わった痛みとは比べものにならないはずだ。
「チャマがいなくなったのは、おまえの胆がすわってなかったからだ。自分のことで精一杯な根性なしとは一緒にいられない、そう思ったからだろ!」
ヒロは本気だ。真剣だ。
こいつの言ってることは正しい、でも。
―――反論の余地がないのはわかっていて、それでも言い返した。
「その通りだよ」
「……」
「けどな、じゃあおまえだったら、ちゃんと正しい反応が出来たか?」
「えっ?」
「おまえが俺の立場だったら、たとえ頭ん中グチャグチャのままでも、優しく笑って相手を抱きしめられたか?」
確かに俺は間違ってる。
情けない、最低な、たぶん一番やっちゃいけないことをしたんだと思う。
でも…!!
胸ぐらを掴んだまま黙り込み、にらみ合う俺とヒロ。
その間を引き裂くように、秀ちゃんが割って入った。
「もういい。藤原も苦しんでるだろうし、ヒロの言うことも間違ってない。でも一番問題なのはそこじゃないだろう」
「……」
「チャマが今きっと、死にそうなぐらい悩んでるってこと。体だって心だって、誰かがそばにいないと駄目なはずだ」
「…あぁ…」
奥歯を噛みしめる俺の前で、ヒロが静かにうなずいた。
言われてみればその通りだが、全然思い至らなかった。
つくづく自分が嫌になる。
「そう、か…」
「俺に言われる前に、自分で気づけって」
「頭が回ってなかった」
「そうなの?俺だって分かったよ、それぐらい。どうして肝心の藤原に分からないの?」
ヒロは涙声だった。
俺が抱えていた不安とか恐怖心とかが全部どうでもよくなるぐらい、その言葉は切実だった。
この理解の差こそ、チャマがいなくなった一番の原因。
ごめん。
そう言いたくても、チャマはもういない。
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