夜明け
side藤
第13話
目を覚ますと早朝で、チャマの家に一人きりで寝ていた。
窓の外が明るい。
ここら辺は緑が多くて、木々のざわめきが夏の近さを告げている。
かすかに鳥の鳴き声。
それだけだった。
ベッドにも部屋にもどこにも、人の気配はなかった。
「…チャマ?」
怒らせたよな。
それ以上に、見限られたかな。
俺はあいつに何をした?
二度と顔を見たくないと言われてもおかしくない。
根性なし、身勝手、卑怯者。
でも、それでも、何とかしなきゃ。きちんと話をしなきゃ。
―――チャマはどこに行ったんだろう。
サイレントにしていた携帯が光り始めたのは、そう思って立ち上がった時だった。
期待してとったそれには、秀ちゃんの名前が出ていた。
タクシーでヒロの家まで移動した。
チャマもいるのかと思ったけど、そうじゃなかった。
「早かったね」
「…うん。チャマは?いるんじゃないの?」
「………」
靴を脱ぐのももどかしく彼の名前を出すと、ヒロの顔が曇った。
いつもならすぐにリビングまで移動するのに、今日は玄関先で立ち話。
秀ちゃんも奥から出てくる。
「藤原。聞きたいことがあるんだけど」
「…何?」
「チャマに何した」
「……」
「言えないようなことをしたのか」
「い、や…」
この二人は、何をどこまで知ってるんだろう。
ありのままを言うのはさすがに憚られる。
言いよどむ俺を見て、ヒロが口を開いた。
「無理やり、やったの?」
「……っ」
「……」
「やっぱりそうなんだな。おまえ、なんてこと…!」
「どうして決めつけるんだよ」
「そうでなきゃ、チャマが黙って出て行くはずない!!」
本当に本気で怒ると、ヒロは声が低くなる。
殴ることは滅多にないけど、掴みかかってくるぐらいはする。
―――出て行った?あいつが?
「チャマ、ここに来たのか」
「夜中に来たよ。さっきまでいたんだ!でも“ちょっと寝ようか”ってみんなで横になって…起きたらいなくなってた」
「ほんの2~3時間だったのに…」
ヒロも秀ちゃんも下を向いて、悔やんでも悔やみきれないという顔をしている。
俺は…、俺はどうすればいい?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます