side直
第4話
内臓が女性って何だ。
思わず笑いそうになって、顔を引き締めた。
あ~藤くんもヒロも言葉が出なくなっちゃってるよ。
秀ちゃんなんか、口を開けたまま固まってるし。
さっき一人で聞かされた時は、頭が真っ白になった。
最初の衝撃が引くのも待たず、緊急で検査をすると言われて婦人科に引きずり込まれた。
婦人科。この俺が婦人科。
逃げたい。間違いなく一生縁のない場所のはずだったのに!
大混乱のままふらふらと言うなりに動き、元の部屋へ戻された後、あらためて告げられた。
やはりあなたは妊娠しています、と。
そこから先の俺の必死さと言ったらなかった。
『ちょっと待ってください!俺は男ですよ!』
――承知しています。体つきも男性ですし、戸籍の上でもそうでしょう。
『じゃあどうして?』
――あなたには子宮と卵巣にあたる器官がありまして。
『…何それ…』
――こういうことは珍しいことではないんですよ。統計上、一万人に一人ぐらいは性別がグレーですし。
『一万人に一人!?』
――ええ。男女の別というのは意外と曖昧なところがあって…
『いやあの…じゃあ俺は、女なんですか?』
――子供が出来たということは、そうなりますね。
要するに男が女になって、しかも発覚したきっかけは妊娠だったってことだ。
道理でえらそーなお医者さんが何人もいるわけだよ。
マジ予防注射とかしてる場合じゃねぇ。
――それで、直井さん。言いづらいことかもしれませんが。
『は…?』
――おなかの赤ちゃんのお父さんはどなたか、教えて頂けますか。
『………』
途端に、前髪の長い細身のメガネっ子が浮かんだ。
今まさにこの病院で、予防注射を受けている。
一瞬迷ったけど、どのみち話すことになるなら早い方がいいのか。
『…藤原、基央です』
――というと…
『今日、一緒に注射を受けに来てます』
――では、お父さんにもお話をしていいですか。
どうしよう。藤くんどう思うかな。俺、こんなことになっちゃったよ。
確かに性別がどっちつかずな人もいるって話は聞いたことがあったけど、子供までできるヤツなんて激レアだろうさ。
『…はい。あの、それと、一緒に来てる2人にも話をしてください。同じバンドの仲間なんで』
――わかりました。では、お呼びしますね。
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