Maria

side藤

第2話

3年ほど前のある日、4人はそろって都内の病院にいた。


その頃、日本中で風疹が流行していて、予防接種を受けておいた方がいいと事務所の人間に言われたからだ。








――藤原さーん。藤原基央さん。


「はい」


――保険証お返しします。問診の後、接種希望の書類…これですね、サインを頂きますね。


「はい」


――じゃ、順番にお呼びしますので、あちらの椅子にかけてお待ち下さい。



その後、ヒロ、秀ちゃん、チャマと続いて同じ説明を受ける。

きっと診察室でも似たような感じだろう。全員まとめてやってくれてもいいのに。



『ねぇ藤くん』

「ん?」

『腹減らない?これ終わったら、何か食べてこーよ』

「そうだな」


――藤原さん、3番診察室へどうぞ。


「あ、お呼びだ」

『いってらー』

「うぃす」



一番手で先生の前に座ると、確認のようにいくつか質問された。

これまでの予防接種歴とか、どんな病気にかかったことがあるか、とか。


少し意外だったのは、「ワクチン接種後しばらくは絶対に避妊をしろ」と言われたことだ。


妊娠中の人が風疹にかかるとお腹の赤ちゃんに影響が出るから、若い人は男女関係なくなるべく免疫があった方がいい。

それは聞いてたんだけどね。


どうやら、ワクチンが体に入ったばかりの人間が子供を作っても、その影響がモロに出てしまうらしい。知らなかった。



――はい、ではこれで終了です。この紙にお名前を…、はい結構です。接種は一週間後になりますね。


「…ありがとうございました」



あれ、なんだ。この場で注射してくれるんじゃないのか。

ちょっと腑に落ちない顔をして出て行ったら、3人に総ツッコミを受けた。



「さっきそう言われたじゃん」

『接種は別の日だって、高ちゅーも言ってたっしょ!』

「そうだっけ?」

「そうだよ!」



間の抜けた会話とともに、その日の診察は終わった。

みんなで食事をして仕事に行って、いつもと何も変わらなかった。

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