プロローグ
side増
第1話
夜中に電話が鳴った。
それも携帯じゃない、家電だ。
一人びくついて目を覚まし、次の瞬間、親しい誰かに何かあったのだろうかと考える。
「はい、もしもし」
『……』
「どちら様ですか」
『……』
「…誰?」
多少イライラした声になってしまうのは仕方ない。
ど深夜に人を起こした挙句だんまりとは、いい度胸じゃないか。
『………』
「ふざけんな、こんな時間に」
『……っ』
相変わらず声は聞こえない。
ただ、受話器越しのわずかな呼吸音にハッとした。
確かに覚えがあった。
叩き切ってやろうとしていた手が止まり、そして。
「誰だよ…?」
のどが、舌が、体全体が震える。
『………、ひ…』
「……」
『ヒロ…』
「…チャマ?」
口に出した名前は、自分でも驚くぐらい呼びなれた響きだった。
聞きたいことは山ほどあった。
でも、それより何より、まず最初に。
「チャマだよね?チャマ、元気なの?今どこにいるの?どこから電話してるの?」
安心したということが、この声で伝わるだろうか。
良かった。本当に、涙が出るぐらいホッとしたよ。
「声が聞けて良かった」
『…うん…』
直接話をするのは、2年ぶりのことだから。
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