エピローグ

side升

第22話

――お疲れさま~!今日のライブも、とっても良かったわよぉ!


直『……』


――あら、無視?そんな怖い顔しなくてもいいじゃない。


藤「……」

増「水、水…」


――あっ、はい!あるわよ!


升「ヒロ、こっち飲め」

増「ありがと」


――つれないわねぇ、みんな。今日のお昼は特製沖縄弁当だったくせに…


升「え!?」

直『あの弁当、まさか?』


――あたしの差し入れよ!美味しくなかった?


増「マジで…俺、結構食べちゃった…」

升「ケータリングにまで手回してるんですか」


――そうよぉ!でね、今日は由文くんにスペシャルなお誘いを持ってきたの!


直『またかよ!しつこいなぁ、いーから帰ってください!俺はライブで忙しいんだ、見りゃわかるでしょ?』


――ツアーが終わった後でいいのよ!ね、とりあえず半年でいいわ、あたしと一緒に…


藤「半年もこいつがいなくなったら、うちのバンドがガタガタになります。お引き取りください」

直『そーだよ!レコーディングもあるし、新曲のリリースだってあるし!』


――もう。しょうがない子ねぇ、せっかく予定をまとめたって言うのに。


藤「いい加減に…」


――あっ、それじゃ今日はこれで失礼するわ。みんなお疲れさま☆


直『~~~っ、2度と来んな!!』

升「でも絶対また来るよな、あれ…」

増「出入り禁止に出来ないのかな…」








ツアーが始まった。

各地の楽屋に神出鬼没で現れるオネエ声の渋い男性(50代)は、もはや芸人のようなノリでチャマに勧誘を仕掛けてくる。


しかし、さすが自分もミュージシャンだけあって、押すタイミングも引くタイミングも上手い。

言いたいことだけ確実に言って、俺たちが本気で怒り出す前にとっとと去って行く。



直『…高ちゅーは、気がついたら止めてくれてるっぽいけど』

升「1人じゃ限界があるよなぁ」

増「みんな忙しいし、何だかんだ言っても相手は大物だしね…」



ここまで来ると一周まわって面白い気もするけど、ライブの疲れとはまた別の徒労感に襲われるのも事実なんだよな。

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