第20話

あぁ、やっぱり怒ってたんだな、と思った。


こいつがここまで怒るのは、自分をダシにされたからじゃない。

仲間に対してこんなことをされたからだ。

汚い手を使って、チャマを奪おうとしたからだ。


その怒りは、おそらく藤原本人に攻撃が向けられた時よりも強い。

あいつ自身に対する攻撃なら、あいつは撥ねのけるだけだ。

でも、チャマやヒロや俺に対して、こんなふうに嫌がらせをされたら。



直『…怒ったね』

藤「怒るよ。当然だろう。めちゃくちゃ怒るよ」



そして、怒ったことをここまで表面にむきだしにした理由は…

今まで何となく感じていながらあえてぼかしてきたチャマの気持ちと、しっかり向き合うつもりになったから。



直『ごめんね』

藤「何が?」

直『…ありがとう』



なぁ藤原。長年の幼なじみと恋をするのに、あらたまった理由や言葉はいらないよ。

ほんの少し背中を押す何かがあれば、それで十分なんだ。








――藤原くんを引き合いに出したことは、謝るわ。


直『うっわ…今さら遅いし』


――でも、あの話。秋田の産院で赤ちゃん絡みの事件があったのは、本当だけどね。


升「え?」

藤「…ああ」



ちょっと、いやかなり忘れていた。ていうか。



増「そこ、まだこだわってたんだ…」


――まぁねぇ、一応切り札だったからね。


藤「……」


――してみる?DNA鑑定。



直『けっ』


藤「別にいいけど、俺ね、じいちゃんの若い頃と生き写しってぐらい似てるんですよ。これで親とだけ血のつながりがなかったら、逆にどうしようかな」


増「あ~…(笑)」


直『だよね!あと藤くんさ、お姉さんの子供とも意外と似てるよねっ!』



目の前で3人が笑う様を見ながら、ほっと息をつく。

良かった。これで高ちゅーの首もつながった。



増「ねぇ、帰る前に海行ってみない?」

直『あーいいねー!』



チャマをこっちへ送り込むことに賛成したメンツにも、この光景を見せてやりたいと思った。

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