side藤
第18話
離陸直後に出されたコーヒーを飲んだら、あまりのまずさにビックリした。
チャマのいれたコーヒーが飲みたい。
というか、笑顔が見たい。
たった1日かそこら離れただけなのに、そう思った。
窓越しに動く青空と雲が必要以上にゆっくりとして見えて、機体は凄まじい速さで飛んでいるはずだけど、後ろから押してやりたくなった。
空港でヒロが調達してきたレンタカーは、真っ黒な四駆だった。
藤「おまえ、すごいの借りたな」
増「だってせっかく沖縄来たんだから、広い道飛ばしてみたいじゃん?」
藤「観光じゃないんだぞ」
増「わかってるよ」
人間より背丈のあるサトウキビの林を抜けて、かろうじて舗装されている程度の道を進んだ。
街中だとアメ車も結構多いから目立たなかったけど(さすがに土地柄か)、他に車が全く見当たらない畑の真ん中だと、デカさが映える。
藤「秀ちゃん」
升「ん?」
藤「もしかしたら、近いうちにアドバイスねだるかも」
升「何の」
藤「幼なじみの男を抱く方法」
途端に2人に爆笑された。
升「ぜってぇ答えたくねー!!」
増「そんなの勢いでいいじゃん!」
藤「……そうかよ」
俺たちは4人揃わなきゃ意味がない。
もうすぐ会える。
窓が全開だったので、会話は丸聞こえだった。
まさかのオカマ口調が気になったが、その辺の事情も含めての話をしているようだったので、ある程度いろいろ聞いてから姿を見せた。
藤「それで?言いたいことはそれだけですか」
――それだけだったらどうする気?
藤「チャマを連れて帰る」
――ふぅん。でもこの子はあなたを好きなのよ。それでもいいの?
藤「いいも何も…」
バカな人だなぁ。心の底からそう思った。
頭が悪いというより、俺やチャマのことを何一つわかっていない。
窓枠から腰を離し、表情を変えずに言った。
藤「チャマはずっと俺たちと一緒にいる。絶対に裏切らない、何があっても。4人ともそうだけど、こいつは特にそういうヤツだ。チャマに手を出すなら、せめてそれぐらいのところは押さえてから仕掛けてこい」
直『…藤くん…ごめん…』
当然のことを言っただけなのに、うつむくチャマ。
どうして謝るんだよ。俺のために、俺のせいで悩んでくれたんだ、謝るのは俺だろ。
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