side直

第16話

直『ないよ、男となんて。あるわけねぇじゃん』


――そう。じゃ女の子とは?


直『…そらもう、ヤリまくりよ』



嘘。だいぶ盛った。



――でも好きでしょう、藤原くんのことは。


直『誰が!』



ごく普通の表情で何をぬかす。

どっからどこまでが出来レースだか知らないけど、そんなことまでバレてなくていい。



直『ゲイと勘違いされるのは、初めてじゃねーけど…』


――元から同性愛者だったとは言わない。でも藤原くんに限ってであれば、恋愛感情まで発展していてもおかしくない。あなたを見ているとそう思うのよ。


直『……』


――類友。あたしの…っていうか、ゲイの直感、なめない方がいいわ。


直『…だから藤くんに手ぇ出そうとしたのか。そうだよな、俺が藤くんを好きだとしたら、そりゃ致命的な弱点だもんな。何でも言うこと聞かせるには、持ってこいの材料だもんな!』


――……。


直『俺のせいかよ!藤くんをこんなことに巻き込みやがって…俺がほしけりゃ正々堂々とそう言やぁいいじゃねーか!』


――だって、そうしたら断られたんだもの。


直『当たり前だろ!俺はあの4人でいたいんだ!』


――大事な“藤くん”のそばに?たとえ一生気持ちを隠してでも、一緒にいたいの?そんなに好きなの?


直『…ばかやろー…』



悔しくて涙がこぼれた。自分の浅はかさに。

そして、曲がりなりにも俺とバンドを組もうと言ってきておきながら、俺の気持ちを全然わかっていないコイツに。




俺が藤くんを好きなのは確かだ。

でも、愛だ恋だというような関係になんか、ならなくてもいいと思っていた。


まぁ10年以上前とか、想いが欲求に直結していた頃は、バカな自分を抑えるのに苦労したこともあったけど。

そんなの、気持ちがバレて藤くんのそばにいられなくなることに比べたら、何てことない。



直『俺はずっとあのバンドが出来れば、それでいいんだよ。あいつの曲のベース弾いていいのは俺だけなんだ!あんたが褒めてくれた俺のベースは全部、藤くんとヒロと秀ちゃんと一緒にいたから、ここまで弾けるようになったもんなんだ!そんなこともわかってねぇヤツが、俺と一緒にバンド組みたいとか言うなっ!!』

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