side升
第12話
ベッドの方から携帯の鳴る音が聞こえてきて、俺も何となく目が覚めた。
寝室から出てきたヒロは、台所で水を飲みながら、何やら喋っているようだった。
時計を見れば、まだ真夜中。
カーテン越しにも暑い闇が伝わってくる。
しばらくして電話を終えたヒロが、俺の寝ているソファにダイブしてきた。
升「うぉっ!?」
増「おはよう秀ちゃん!」
升「おま、おはようって時間じゃないだろ!」
増「ゲーノージンたるもの、いついかなる時も挨拶は“おはよう”でしょ?」
升「俺たちが芸能人ってガラかよ…」
そう言ったら、ヒロは何がおかしいのか、声を上げて笑った。
増「とにかく、すぐ起きて」
升「どうかしたの」
増「さっきの電話、聞いてたでしょ。藤くんから」
升「………」
チャマのことか、何かあったのか。
そう聞こうとした瞬間、俺の体にかかっていたタオルケットが、長い指に引きはがされる。
増「30秒で支度してっ」
升「ラピュタより厳しいってどんだけだよ!」
増「もう、はーやーくー!チャマを連れ戻しに行くって言うのに!」
升「沖縄に!?」
増「そうです!すぐ羽田行って、朝イチの便に乗れるかどうかが勝負!」
升「…わかったから」
増「早くしないと、俺この窓から飛び降りるよ!?」
升「待て!…っておまえ、ここは1階だろ」
増「でも一瞬焦ったでしょ(笑)」
升「うるせー(笑)」
ペットボトルを奪い取って飲みながら、窓の方を振り返った。
都心からほんの少し離れた所にある、こぢんまりとしたマンション。
高層階と違って小さい庭が付いているのが気に入ったんだと、引っ越した時に言ってたっけ。
升「留守中にまた虫が入ってこないように、ちゃんと目張りしとけよ」
増「あー…」
今回はどれくらいで帰ってこれるのか知らないけどさ。
以前、旅行で1週間くらい家をあけた時、帰ってきたら謎の虫が入り込んでて大変だったんだ。
(主に駆除にかり出された俺が)
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