side増
第6話
秀ちゃんの言うことはもっともだった。
例えやめるというのが本気だったとしても、今抱えている仕事を区切りの良い所まではやる。
最低でもライブは終わらせてから、出て行く。
俺だってそう思うよ。チャマなら絶対にそうするはずだ。
藤「仮にチャマが何らかの嘘をついているとしたら、絶対に理由があるはずじゃん」
増「でもそれを隠してる、ってことだよね」
升「俺たちから離れてまで?」
藤「何のために?」
増「それは…」
簡単なんじゃないだろうか。
ふと思いついた。これは今、話の流れで自然に出てきた考えだけど、案外当たっているかもしれない。
増「…考えるまでもないよ」
升「え」
藤「何」
あの頭にバカがつくほど真っ正直な人間があえてそんなことをするなら、理由はただ一つ。大切なもののためだ。
そして、チャマがこの世で一番大切にしているのは。
増「藤くん」
藤「は?」
増「藤くんのためっていう可能性が一番大きいんじゃないかな。それかチャマ自身も含めた、4人全員のため」
升「何か問題が起こって、それから守るため、ってことか?」
増「もしかしたら、だけどね」
藤「………」
藤くんが黙り込む。
チャマがいきなり全てを捨てて、人生を激変させてまで何かをする理由。
そこに藤くんが思い当たらなかったのは、鈍いからじゃない。自分が張本人だから、かえって考えが及ばなかっただけだろう。
…と思ったら。
藤「なんで同じこと考えてんだよ」
増「へっ?」
藤「実はそれ、俺も考えたんだけど…自分の影響力がそこまで大きいはずはない、って打ち消してた」
増「あ~…そっか。ははは」
俺と秀ちゃんは顔を見合わせて、ちょっと笑った。
影響力っていうより、自分が原因でチャマを悩ませたのかもしれない、とは考えたくなかったんだろうな。
藤「でも、もしそれが本当なら」
升「うん」
藤「チャマを連れ戻したい」
増「そうだね」
必ず、俺たちのところに帰ってきてもらわないと。
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