第33話

「結は御堂組のことは知ってるか?」



走り出してしばらくした頃、奏がそう聞いてくれたけど、正直、私は外の世界を知らなさすぎる。



小学校と中学校は数えるくらいしか行けなかったし、高校は入学すらしていない。



「あんまり、わかんない、かな。」



そういうと奏は優しく頭を撫でて、



「じゃあ、説明する。」



と言ってくれた。そして、真剣な顔になって組について説明し始めた。



「まず今、日本の極道は2つに分かれてる。劉神会と呼ばれる組織が統治する関東と、虎龍会という組織が統治する関西。関東と関西は今、敵対状態にあるが、本当に交戦すれば双方に甚大な被害がでる。カタギの人間も巻き込むかもしれねぇ。だから警察を間にいれて不戦条約を結んだんだ。ヤクザの世界で契を破るのは親殺しの次に重い罪だからな。」



「じゃあ、今は戦ってるわけじゃないんだ。」



「あぁ。敵対関係に変わりわないがな。俺が若頭をしている御堂組は劉神会のトップ、いわば"親"をしてる組だ。力で御堂に及ぶ組はない。そして、御堂組の組長で、劉神会の会長でもあるのが俺の親父だ。」



なんだか今の状況が信じられない。逃げる途中で出会ったのは極道の若頭をしている奏で、でも奏は私にはすごく優しくて、怖いとかそういう気持ちにはならない。

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