第13話

「わ……わた…し……。」



いつぶりだろう痛みからの声じゃない、自分の意志で声を発したのは。自分で自分の声を聴いたのは。



「綺麗な声だ。結は綺麗だ。本当に。」



初めて誰かに綺麗と言われた。反応に困ってしまうが、素直に嬉しかった。



「よく頑張ったな結。」



これ以上ないくらい優しい声でそう言って彼は私を抱きしめた。



何もかもが初めてだ。誰かの手に殴られるという行為以外をされたのも、人の温かさを感じたのも、そして何より”幸せ”を感じたのも。



”頑張った。”その言葉が私が無意識に求めていた言葉だったのかもしれない。



彼の言葉を聞いて、抱きしめられた瞬間、長い間流していなかった涙が自然と頬をつたった。

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