第12話
そして、まだ2桁にも満たない年齢の時にふとお父さんが殴りながら私に言った。
「お前の存在自体が汚いんだよ!だからお前の触れたものも汚くなるし、お前が発するその声も汚いんだよ!黙ってろ!」
お父さんにしてみれば、殴るたびに声を出す私にいらついて出た言葉だったのかもしれない。でも、幼かった私には強く心に残り、それから一切言葉を話すことは無くなってしまった。
”私は汚いって言ってた。”
再び紙にそう書くと、彼はさらに顔をしかめた。でも、すぐに私に向き直って、
「お前は汚くなんかない。その体で、たくさんの痛みや苦しみを背負い込んで、よく頑張ったって褒められるべきなんだ。わかるか?」
私はその言葉に対して、黙ってしまった。
初めて、優しい声で話しかけられて、初めて”頑張った”って褒めてもらえて、彼という人に笑顔を向けてもらえた。
今までの自分がどれだけ望んでも手に入らなかった”暖かさ”を感じて、どうしていいか分からなかった。
「うん?結は本当は喋れるんだろ?お前は汚くなんてない。俺が保証するからお前の声を聴かせてくれ。」
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